秋桜のエッセイ

医療機関の受診について

2005-06-25

最近持病の関係で病院へ行く機会が多い。受診をしてみて感じるのは、短い時間で自分の問題を伝えることがいかに難しいかということである。医療職として働いてきた人間がそう思うのだから、恐らく医療機関に慣れていない人にとってはもっと難しいことになるのだろうと想像がつく。また発達障害があるとコミュニケーションに問題が出やすいため、短時間で適切な情報を伝える、医師からの話を理解して今後の治療方針をその場で選択するといったことが難しいことがあるだろう。
そこで私が受診の際に気を付けていることをまとめてみたいと思う。

1.病院の選び方
今回具合が悪くなった際に参考にしたのはインターネットだった。最近はホームページがある病院も増えており、院長の挨拶、病院の理念などを調べることができる。紹介パンフレットを作成している所も増加しており、病院へ行けばもらうことも可能である。また口コミサイトなどで受診した人の感想を読むこともできることがあるので、それらの情報も参考にした。

病院紹介の文章で気をつけたのは、治療について不利な情報(治療薬の副作用など)も含めて分かりやすく書いてあるか、病院の理念なども書いているかといったことである。病気によっては手術実績や治療法も参考にするといいと思う。ケースワーカー、訓練士といった医師以外の専門職員がいるのか、そしてどういうサービスが提供可能なのかも状況によっては調べておくといいだろう。医療関係の行政サービスを受ける際はほとんどの場合本人あるいは保護者の申請が必要なので、相談できる人がいるといざという時に頼りになる。

また話を丁寧に聞いてくれるか、個人情報の管理や必要に応じて他機関と連携を取っているかといった情報も参考になる。その他に意外と参考になるのが事務員の対応で、混雑具合等を分かりやすく説明をしてくれる所は比較的医師の態度も好印象だった。

2.受診時に準備しておくこと
いざ医師の前に行くと症状に関して適切に説明するのは意外と難しいことが多い。できたらメモ程度でもいいのでどんな症状がいつ、どのように生じているかを記録しておくといい。大抵の場合病院で問診表を渡されるので、そこに書き写せるよう準備しておくと診察時にスムーズに説明できる。この時他の医療機関にかかっていたら、有料にはなるが医師に紹介状を書いてもらうとさらに今までの検査データや薬のことなどが分かるため、今までの経過もより分かりやすくなる。また体温、脈拍といった家でも測定できるものがあれば、それも測定しておくといい。血圧計があれば朝と晩の血圧も測定すると循環器の病気や生活習慣病の時には役に立つ。

同時に元気な時にできたら平熱や安静時の脈拍、女性の場合は生理の周期を記録しておくと具合が悪い時にすぐに「おかしい」と気付けるのでチェックしておくといい。

3.受診時に気をつけること
医師との会話時に気をつけるのは「自己で病気を決めない」ということである。「こういう症状があるので、~という病気があると聞いたので気になって来院しました」くらいに留めておいた方が無難である。

日本の法律では医師しか診断できないことになっており、医師の中には病名を言われることを嫌がる人も少なからずいる。また同じような症状でも複数の原因があるため、病名よりもむしろ症状を丁寧に伝えた方が医師としては助かるのである。

特に痛みといった感覚的なものは測ったり調べたりできない主観的なものである。本人にしか分からない物なので、意識を集中してどんな時にどんな痛みが生じるのかを話さないと医師に伝わらない。「こんなに痛いから(苦しいから)医師は分かってくれるはず」というのは実は大きな思い違いであり、「自分の痛みは自分にしか分からないから、相手に分かるように伝える努力をしよう」と考えを変えた方が医師とのコミュニケーションもうまく行くと思った方がいい。

受診時にはできたらその場で理解して意思疎通をするのが理想だが、発達障害の人にはそれが難しいケースもある。そういう場合はできれば説明が分かりにくいことを伝え、許可を取った上で録音や録画といった記録を残すことも有効だろう。医師によってはメモや画像のコピーを渡してくれることもあるので、そういう配慮をしてもらうことも大切である。

もちろん場合によってはこちらも勉強する必要がある。最近はインターネットなどで関係のサイトが開かれており、掲示板などでも情報交換できる。しかしより専門用語などを調べるには看護師用のテキストなどを自分で読んで深く理解してみるという作業も時として必要になる。医療業界には独特の言い回しや表現があるため、状況によってはこの業界の常識などを知っておいた方が判断しやすいこともある。

しかし結局大切になってくるのはコミュニケーションの能力なのだと私は考えている。医師も人間である以上相性があるし、協力体制を作れない人ならば先へ進めないこともあるだろう。今は医師も診療態度について考え直してきており、過渡期であるともいえる。いい医療を求めて行く権利と同時に私達もいい診療を受けるために努力する責任も伴う時代なのだと私は考えている。

参考文献
痛みのサイエンス 半場道子著 新潮選書
なるほどなっとく漢方薬NO.8漢方治療の上手な受け方は? 監修金田浩 執筆田代眞一、根本幸夫 (株)ティ・エル・エム・ジャパン(薬局配布パンフレット)

参考サイト
新・医師にかかる10箇条 http://www.coml.gr.jp/10kajyo/index.html


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