秋桜のエッセイ

交流分析について(その2)

2005-07-27

今回は交流分析の中でまず最初に行う構造分析(Structural Analysis)について説明したいと思う。その1にも書いたが、構造分析は各人のパーソナリティの分析を目的とするものである。

交流分析の提唱者であるエリック・バーンは人の心には3つの自我状態(親、大人、子ども)があり、必要に応じて3つのうちの1つが主導権を握ると考えた。

親(P:Parent)とは、その人が小さい頃父母や身近な人たちに言われたことや行動したりしたことが心の中にメッセージとして取り込まれたものである。親の要素が主導権を握っている時には本人が気付かないうちに親達が使ったことばや身振り、話し方に似た反応をしている。親の要素には父性に近い批判的な親(CP:Critical Parent)と母性に近い養育的な親(NP:Nurturing Parent)がある。

大人(A:Adult)とは、現実を客観視するためにあらゆる角度から情報を収集し、冷静な検討を重ねて決断をする能力である。この能力が高いと分析的でビジネスライクに事を運べる反面、打算的で無味乾燥な人間になる可能性も高い。

子ども(C:Child)とは、人が持って生まれたそのままの姿で生命の原点ともいえる。それとともに人生早期の体験から学んだ、対人反応の様式も含んでいる。子どもの要素には親の影響を全く受けていない明るく自由奔放な子ども(FC:Free Child)の要素と小さい頃から周囲の人たち(特に母親)の愛情を失わないために順応した子ども(AC:Adapted Child)がある。

その自我状態が一体どのような仕組みになっているのかを明確にすることが構造分析の目標である。エゴグラムというテストはこの構造分析を具体的に分かりやすくするための方法の1つとして開発された。初期のエゴグラムは直感的にグラフにあらわす物だったが、主観的になりやすいという欠点があったため、1979年にロバート・ハイヤーによって質問紙法のエゴグラムが開発された。

日本では東大心療内科のチームが1984年に統計処理した東大式エゴグラムを発表し、その後改訂版も出版されている。

エゴグラムの長所は簡単な質問で自分と正確の特徴を知ることができることだが、その簡潔さばかりが先に立ってしまい、本来の目的である自分自身を知るための分析がおろそかになっているように感じている。自分が陥りがちなコミュニケーション・パターンに気付き、それが周囲の人にどのような影響を与えているのか、そしてうまく行っていないコミュニケーションのパターンならばその原因を考え、よりよい人間関係を築くために上手に利用することが大切だと感じている。

発達障害の人は自分が思っている自己像と他人からのイメージが異なっているケースも多く、それでコミュニケーションに問題が生じることもある。その違いの原因を考え、認知の違いなどを学習していくことも社会に適応していくには必要だと私は自分の経験から感じている。

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