分裂病の無関心、無感動、疏通性のとぼしさが薄められた形であらわれた状態といえる。何をしても喜びや感動がとぼしく、他人との交流も少なく、たとえ家族とも親密な関係を持とうとしない。称賛にも批判にも関心がなく、社会的習慣にも超然としている。せまい範囲で立派な仕事もするが、人づきあいを好まず(気をつかいすぎて疲れるためではなく)、淋しいとも思わない。 (『新版精神医学ハンドブック』(山下格著、日本評論社)p.212より)これはまるで私みたいではないか。(そんなに無感動でもないし淋しいと思うことだってあるけれど、そう見られてもしかたがないかも。DSM-IVの診断基準なんかもばっちり満たすみたい。)
それもそのはず。分裂病質人格障害といわれるものとアスペルガー症候群はとても関係ありというか、ほとんど同一のものという見方もあります(ただし、分裂病質の人のすべてがアスペルガー症候群かといえばそうではないらしい。それにアスペルガー症候群の人の多くは上の引用のようなイメージとは違います)。
分裂病質というのは分裂病ではないけれど分裂病的なものという意味で、アスペルガー症候群は(狭義の)自閉症ではないけれど自閉症的なものです。それが結びつくとするとアスペルガー症候群は自閉症と分裂病の中間に位置することになります。認知心理学的な立場から、自閉症と分裂病とを「心の理論」(心を認知する能力)の欠如と過剰によるものであるという説明がなされます。自閉症者は心の理論が欠けているために人の心が見えない(マインド・ブラインドネス)という困難を持つ。一方、分裂病の陽性症状の幻覚や妄想は、心の理論の過剰な活動によるものだという。そしてアスペルガー症候群の場合は、心の理論を持つのだけれどその獲得時期が普通の人よりも遅れ、早期に欠如していた悪影響と遅く獲得した心の理論の過活動がともに問題になっているという(これにより二次的な精神障害を発症しやすいことが説明される)。なるほどとも思うけれど、本当かどうかは分かりません。
分裂気質という言葉はもっとよく聞くでしょう。これは分裂病質ほどではないけどそれに近い性格ということです(同じ意味で使われていることも多いようですが)。よく「分裂気質の芸術家」とかと言いますね(例:グレン・グールド)。分裂気質と見られているような人も、実はアスペルガー症候群やそれに近いものを持っていたことの結果なのかもしれません。
分裂病質ばかりではなく他の人格障害(強迫性や回避性や境界性とか)とみられるような場合もアスペルガー症候群が関係していることがかなりあるのではないかと思います。(アスペルガー症候群のことを認識している精神科医というのは少数派のようです。)
人格障害(アスペルガー症候群もそう)と呼ばれるものは、性格(能力的なものや感受性も)がいくらか人と違っているというもので精神病とは違います。病気だから治すべきものというものではなくて、その性格にあった生き方ができればそれでいいのです。それに人格障害といってもそれはその人の人格のごく一部でしかないのです。
精神分裂病にしたって100人に1人くらいの人がなるありふれた病気にすぎません。それに薬で症状を抑えられるしかなり回復もします。だいぶ誤解されているのではないでしょうか。
※現在、「分裂病」の呼称は「統合失調症」と改められています。